6/27/2013

展示のための3つのテキスト





a) 
この大きな水槽の左側には、ヒーターとポンプ、そして水の出てくる穴がついています。 
この水はどこからやって来るのか。 
右側の穴から水槽の水を少しずつ吸い出していて、管を通って裏の浄水器へ運ばれています。 
そのフィルターで濾過した水が、左側に戻って来ているのです。 







 b) 
祖母がちょうど私くらいの歳のころ、いつもの散歩ルートにある裏山の道で見かけたという出来事です。 

いつも通る三叉路に、三羽の鳥がいた時期があったそうです。 
その三羽は、たまたまいっぺんにここに降り立ってしまい、そしていっぺんに目が合ってしまったのだそうです。その時点からどの鳥も視線を外せなくなり、幾日もの間、固まったままにらみ合ったのです。 

それから数日間、ここを通るたびに事態がそのままなのでとても気になったけど、その緊張感に割って入ることはなんだか申し訳なくて、三羽を結んだ三角形の中に入らない位置から、祖母は黙って眺めたり、脇を通ったのだそうです。 

ところがある日、この光景に気づいたイタチが、一羽をサッと咥えてタタタタタと茂みの奥へ駈け去るところを見てしまいました。 
祖母が唖然とする中、二羽が残されました。 
その内、一羽は小首をかしげて少し間を置いた後、「ピッ」と一声発して飛び立ちました。 
その直後、もう一羽はやおら地面に嘴を突き立てると、グッとめり込ませ始めました。 
地面を掘り出すと、あっという間、嘴が、体が、地面に埋もれていって、祖母が駆け寄った時にはもう只の小さな黒い縦穴だったそうです。 

翌日その穴の前を通ると、じんわり水分が滲みだしていました。 
その水の量は日を追う毎に増してゆき、小さな湧水地点になり、ひと月もしないうちに近くの沢につながりました。 
ここの湧き水は美味しいと、だんだん地元で評判となりました。 
現在ではペットボトル詰めが道の駅で販売されていて、私も買って飲んだことがあります。 







c)
私は壁を殴り続けました。
壁紙が破れ、ボードがむき出しになり、割れて穴が広がっていきました。 
やがて暗がりの中に見えたのは水道の蛇口でした。 
確かめても、この壁の中にも裏にも水道管は通っていません。 

にも関わらず、その蛇口を捻るとオレンジジュースが出てきました。 
私は汗を拭い鼻をすすりあげると、ジュースをコップに注ぎ、息を整えながらその表面を見つめていました。
「鼻が止まったら、柱になっている角材にチェーンソーを当ててみよう、ジュースが溢れてくるかもしれない。」と考えていました。 
タネが知りたかったのです。